金曜からカレーを食べてみよう

天パ眼鏡が食ったり読んだり考えたり

難読地名の魅力。読めないからこそ生まれるもの

難読地名、皆さんの地元や仕事場の周り、通勤中に通る場所なんかに一つはあるのではないでしょうか?

 

電車に乗っていて、アナウンスやローマ字表記をちょっと意識すると、思わぬ発見に出会えるかもしれません。

 

自分はこの難読地名が結構好きです。その土地の歴史や個性を一番表しているいわばパーソナルマークのような立ち位置だと思うんです。

 

また、本来間違ってはいけないはずの「地名」を誤って覚えていた自分。そんな自分が正しい読みを知って、過去の過ちに気付いたときのこの得も言われぬ開放感はなかなか快感です。

 

しかしこの快感が生まれるのは自分だけのようです。

以前大学で「女川(おながわ)」を間違って「女川(めがわ)」と呼んでいた友人に指摘したら、逆に怒られてしまいました。

会社の先輩が「本牧(ほんもく)」を「本牧(ほんまき)」と呼んでいたのを指摘したらスルーされました。

指摘の方法が間違っていたのでしょうか。

 

今日も、とある事情で愛知県の土地を調べていたときに「福谷町」という地名に出会いました。

これ普通に「ふくたにちょう」で通じると思うのですが、正解はなんと

「うきがいちょう」

でした。

 

もう訳がわかりません!この超高レベルな難読地名を嬉々としてパートさんに話したら、冷たい目を返されました。

・・・何が間違っていたのか未だに分かりません。

 

 

しかし、今後ますますこういった難読地名は減っていくでしょう。

理由は簡単です。

以前は地名なんて、その土地に住んでいる人が読めれば用が足りました。

しかし、交通網の発達と全国の出来事が知れるメディアの発達によって、その土地の出来事がその土地に住む人たちだけのものでは無くなってきてしまったのです。

 

そうなると、情報を伝達・共有する際に読みにくい地名は単なる足かせと化します。

 

実際、最も人が行きかう東京では、既に地名の多くが消滅しています。

 

例えば、東京に暮らす人でこれを読めない人はそういないと思います。

 

御徒町

 

JR山手線の駅名にもなっており、アメ横などの観光スポットもあります。

 

正解はもちろん「おかちまち」です。

 

徒(かち)というのは徒士(かち)から来ており、徒士とは江戸時代に馬上の資格をもたない(馬に乗る資格のない)武士のことをさします。

この徒士たちがこの地に多く住んでいたことから、御徒町という名前が付けられました。

 

今は、御徒町という地名は1964年頃行われた地名変更の影響で無くなり、全て「台東」や「上野」という表記に変更されました。

 

しかし、御徒町という地名は駅名にも使われており(御徒町駅新御徒町駅上野御徒町駅仲御徒町駅)難読地名で、もう地名としては残っていないにもかかわらず高い知名度となじみ深さを残しています。

 

 

では、都内で御徒町よりもあとに消滅した地名を皆さんは読めるでしょうか?

 

新宿の西側、現在は西新宿と呼ばれるあたりから歌舞伎町の一部にかけてこんな地名が残っていました。

 

角筈

 

これを読める人は、「御徒町」を読める人の2割にも満たないかもしれません。

 

正解は「つのはず」です。

f:id:makige39:20160706181808j:plain

この地名の由来は面白く、新宿区が見解として挙げている説は、

この角筈一帯を開拓した渡辺与兵衛という人物が、髪の束ね方が独特で、角にも筈(矢を弓の弦に引っ掛ける部分)にも見えたことから、皆が与兵衛のことを「角髪」あるいは「矢筈」と呼ぶようになって、それが転じて「角筈」になった。

というものです。

f:id:makige39:20160706180958g:plain

 

これ、現代でいうなら具志堅用高が耕したら、そこの地名が「アフロ」になったようなものですよ。

やっぱり地名って滅茶苦茶なものもあって面白いです。

 

そんな面白い由来をもった難読地名「角筈」も1978年を最後に地名から姿を完全に消します。

 

もう現在では、その地名を今では歴史学者やそこに昔から住んでいた人たち、そして一部の地図マニアしかもう覚えてはいないでしょう。

 

角筈はバス停や一部の建物にその名を残すのみです。

 

御徒町との違いがどこでついたのかと言えば、もう鉄道敷設計画の差と言わざるをえないかもしれません。

 

このような、国の一事業によって消える地名と消えない地名がはっきりと分かれてしまうのは哀しいものがあります。

 

 

今後、東京五輪も開幕しますます海外から訪れる人間が増え、難読地名にとって存在しにくい時代に入っていくかもしれません。

 

たとえそうなっても、難読地名に初めて出会った頃の感動を忘れずにその名をずっと覚え続けていたいものです。